大石 学(p),米木康志(b) DUO
大石 学(p),米木康志(b) DUO


July 15, 1999 宇部・和楽

大石 学(p),米木康志(b)

田口"美弓"あゆみ
「聴いて良かった」と思ったライヴは幾つもあります。でもこの日は違いました。

もしこれを聴き逃していたら、その損失はおいそれとは埋めようがなかった…

そんなライヴだったのです。

7月15日(木)、宇部市の「和楽」。40人も入れば一杯になりそうな小さなお店です。

大石 「今日は高いところからゴメンナサイって感じですが、

僕とは2年くらい一緒にやってるんですが、素晴らしいベーシストです、米木康志」

拍手を受けて20cmばかり高い台の上でお辞儀をする米木さん。

「ピアノは大石学、この2人でやりますので、最後まで聴いて行ってください」

「古河(こが)にアップスってとこがあって、こないだはそこの、

普段はクラシックしかやらないホールでDuoでやって、

音もすごく良くて、良い演奏ができたんですが、

古河を単に英語にしただけなんですが、『OLD RIVER』って僕の

オリジナル曲と、パット・ベネターの曲で、元々JAZZの曲じゃ

ないんですが

『PAINTED DESERT』彩られた砂漠、河の曲と砂漠の曲を続けてやります」

『OLD RIVER』ピアノが岸辺の緑と穏やかな水面を描き出し、ベースは河の深さと流れの豊かさを

思わせる。かくも鮮やかに風景が浮かぶのは先に曲名を聞いたせいだけではないでしょう。

『PAINTED DESERT』他ジャンルの曲をJAZZアレンジでというのはよくありますが、これは変に

「JAZZらしく」などと考えず、あくまでこのDuoの自然体の演奏という感じ。

しかしベースが鋭く切り込んで行く様など、やはりJAZZならではでしょう。

『LONG AGO AND FAR AWAY』ちょっと澄まし顔のピアノで

始まった…と思うやすぐにベースが楽しげに歩き出し、

スウィンギーな演奏が始まります。米木さんのベースはソロで

メロディを取っていても絶対にリズムを外さない−−

よく「正確なリズム」と評されますが、

単に正確なのとは違う、聴き手にリズムを「見失わせない」ですね。

(これが当たり前のようで、リズムは正確なのに何かだらしないベースってのも結構あったりする^^;)

今日は小さなハコで生音なので、ニュアンス豊かなベースの音も存分に楽しめます。

『CONTINUOUS RAIN』

この曲を聴くと、降り続く雨が鬱陶しいものでなく美しいものに変わりますね…。

『雨音』CDのテイクとも4月に聴いたのともまったく違う演奏。

ワンコーラスの間にもクルクルと印象が変わり、雨の風景をコラージュしたよう。

1年前にも同じバージョンで聴いてますが、あれはもっと凄かった。

なにせ曲の後半になるまで『雨音』だと気付かなかったもん。(^_^;;;

2nd.セット。 1曲目、米木さんが「俺、あの曲好きなんだよね〜」と言われる『MOON RIVER』。

ワンコーラスをベースが歌い上げた後、静かにピアノが絡みます。

「たぶん、この曲はここでやるのは初めてだと思うんですが、今年の1月6日に亡くなった

ミシェル・ペトルチアーニってピアニストがいたんですが、僕は彼がデビューした時から注目してて、

あ、僕と似てるなって思ってて、もちろん向こうのほうが全然うまいんですが、彼が亡くなった時に

追悼する曲を作りたいと思って作った曲で、『TO THE SKY』といいます」

『ALL THE THINGS YOU ARE』本日一番のハードな演奏。私この曲好きなんです。

しかし、よくもこれだけ次から次にいろんな「手」が出るもんだね(^^;)>大石さん

「宇多田ヒカルちゃんがすごくヒットしてて、それと坂本龍一がピアノ弾いてるCMの曲が

ヒットチャートでトップになってて、歌のない曲がチャートに入ること自体初めてだそうで、

あのCMってどうやって撮ったんだろう、あれ本当に渋谷の交差点で撮ってたら凄いことになる

なとか思ってるんですが…ええと、何を言ってたんだっけ、宇多田ヒカルを聴いた人が次に

坂本龍一を聴くんだろうか、なんかヒーリングミュージックが流行ってるらしいんですが、

聴いてると暗くなるとか、かえって落ち込むとかいう話もあって、

僕のピアノはそんなことないと思うんですが、聴く人を癒したいって気持ちで作りました、

『EMBRACE』抱擁という曲です」

アンコール。 「僕は自宅でピアノ教えてたり、音楽学校で講師やってたりするんですが、

今度また2つ学校で講師やることになっちゃって…、

次にやる曲はまだ曲名つけてなくて、学校で空き時間に何となく弾いてた

ら、生徒の1人が、20才くらいの女の子なんだけど『先生、その曲は私

の中では“待てる女”って感じです!』って言って、絶対五木ひろしとか

の世代じゃないはずなんだけど、都はるみの『着てはもらえぬセーターを

寒さこらえて編んでます』みたいな感じなのかな、僕は全然そんなつもり

ないんだけど、彼女は北海道から来てる子なんで、やっぱ北のほうの人って暗いのかなとか思って」

…米木さん(函館出身)って暗かったっけ???(^^;)

「聴いて『いや、私はこんな風に感じた』ってのがあったら、後で僕のとこまで言いにきてください

」楽譜には『待てる女?』とありました。

このDuoは1年前にも聴いていたのですが、その時は楽器のコンディションが悪く−−店のピアノが

良くないのと前日が大雨の中の野外ライヴ(ケイコ・リーの歌伴@宮崎)でベースが湿ってしまい

全然鳴ってなかった−−いささか物足りなさが残りました。ですが今回は。

ピアノとベースが共に歌い、時に対峙し、対等の関係で音楽を紡いでいく。

その生々しい現場に幸運にも居合わせることができた、そんな感覚。

しかしおそらく互いの音しか見えていないであろう瞬間瞬間が、決して聴き手を拒絶しない。

親しみやすいメロディが通俗に流れず、ハードなインプロヴィゼーションが独りよがりに陥らない。

この絶妙のバランス。

Soloプラス1でもTrioマイナス1でもない、Duoである必然性に満ちたDuo。

この日、私はJAZZの魅力を少し理解できた気がします。

§  §  §  §  §

アフターステージ。

マスターの山本さんがピアノを弾きかけると米木さん「あ、一緒にやりましょ〜」

曲は『MISTY』『イパネマの娘』。

これが洒落た華やかなピアノでうまい!ちょっと鈴木宏昌さんみたいな感じかな。

和楽に時々出演されてるそうです、今日はお客の川崎尋弓さん(b)に米木さんが「何か弾いてよ〜」

「米木さんの後でなんて弾けませんよ」「いいって、余興なんだからさ〜」

「だって楽器が無いですから」「それ(米木さんのベース)弾けばいいって」「いや、お借りする

わけには」「いいっていいって」そうこうしてるうちに大石さんは既にピアノの前。

川崎「何でもいいですか?」大石「知ってる曲なら(笑)」。

曲は『SOFTRY,AS IN A MORNING SUNRISE』川崎さん、弦高が高くて後半は指がつりそうだったとの

ことですが(「これでもさ〜昔よりだいぶ低くしたんだよ〜」)、独特のコード展開に米木さん

「いいじゃん、面白いよ〜」と興味深げでした。

さて、翌々日はこのDuoと城戸夕果さん(fl)がゲストで下関ファンキージャズオーケストラの定期

コンサート。当然行きますよー(^^)/。「では、また明後日」とご挨拶してお別れしました。

§  §  §  §  §

翌日。実家(下関)にいた私はお醤油(^^;)が切れていたので買いに出かけました。

お醤油を持って、てくてくと歩く帰り道。前方の道端に数人の人が佇んでおり、

中に髪の長ーい女の人がいました。

ところがそのまま歩いて行くと……それは女の人じゃなくて米木さんだった。

一緒にいたのはファンキーのメンバー、紅一点(こちらは本物の)は城戸夕果さん、

皆で食事して店から出てきたところ。直後、大石さんも出てきて…。

びーーーっっっくりしたよおおぉ(/_;)。

田口"美弓"あゆみ VFF01153@nifty.ne.jp ※文中、一部敬称略


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